「、調子はどうだ?」
女性用船室の扉を開けて中に入ると、ベッドに横になっていた女の子が体を起こしてこちらを見た。
「チョッパー!うん・・・今日は気分いいよ。」
「そっか・・・。」
この子の名前は。
細かい経緯はおれいなかったからわからないけど、食料の買出しに寄った町で檻に入れられ奴隷として売られていたらしい。
こんな時代だから人身売買も無いとは言い切れない。
何らかの理由があって身売りされる人も少なくは無い。
でも・・・この船の船長、ルフィにそんな理屈は通じない。
あっという間に檻に向かって行ったかと思うとその女の子に言ったんだ。
「出たいか?」
女の子はおびえた様子だったけど、もう一度ルフィに声を掛けられた時に小さく頷いたんだ。
それを見たゾロが刀で檻を壊して、ルフィとサンジが奴隷商人を倒して・・・その子は自由の身になったんだ。
とりあえず船に乗せて皆でその子と話をしたんだ。
これからどうするかって話をして、家に帰った方がいいって皆言ったんだ。
(ルフィは反対してたけど・・・)
でもは海賊に家族を殺されてしまって帰る所が無かった。
「そんじゃあお前、オレ達と行こう!」
船長であるルフィが嬉しそうにそう言った時、女の子は泣き出したんだ。
おれみたいに声を上げて泣くんじゃない。
声を殺して泣くんだ・・・。
そのまま気を失ったその子を船に乗せることに誰も反対しなかった。
もっと反対すると思ったナミですら・・・この時はもう何も言わなかった。
どうしてだかよくわからないけど・・・連れて行きたいっておれも思ったんだ。
今日の分の薬をベッドの横に置くとが眉を寄せた。
「チョッパー・・・このお薬飲まないとダメ?」
「ダメだ。この薬は解熱剤なんだ。飲まないとまたすぐ熱上がるぞ。」
「ん・・・」
「どうした?どこか痛むのか?」
おれはの腕を取って脈を計った。
ちょっと早いけどこれぐらいは大丈夫。
ベッドに乗っかっての額の熱を測ろうとしたら急にに抱きしめられた。
「なっ、なにすんだ!?」
「チョッパーってあったかいねぇ・・・」
暴れてみたけどはぎゅっと抱きついてるから離してくれない。
これ以上おれが暴れるとの熱が上がるかもしれないから、諦めての腕の中にいることにした。
「・・・お薬飲むと眠くなるでしょ?」
「・・・うん。眠れるように解熱剤に睡眠薬も含まれてるんだ。」
「一人で寝てるとね・・・夢を見るの。ルフィ達に会う前の夢・・・鳥篭の中でずーっと歌っている夢。」
「・・・夢?」
の胸に抱きしめられてるから表情はわからないけど、すごく悲しい気持ちが伝わってきた。
「お父さん達といる時はね、歌うの大好きだったの。あたしが歌うとお父さんもお母さんもお兄ちゃんも喜んでくれた。だからいろんな曲を歌ったの。青空の歌、お花の歌、太陽の歌・・・いろーんな歌を。でも・・・鳥篭の中では決められた歌しか歌えなかった。他の歌を歌ったら鞭で叩かれたりして・・・それから歌うのが怖くなっちゃった。」
「・・・」
「寝るの・・・怖いの。眠るとそんな夢ばかり見ちゃうから・・・夜中に苦しくて飛び起きたりしちゃう事も多くて・・・起きるたび、隣りのナミさんが声掛けてくれるの・・・大丈夫?って・・・でも心配かけたくなくて平気って言うんだけど・・・ナミさん、ヘンな子って思ってないかな?」
「ナミは・・・思ってると思う。」
の腕がビクッて震えた。
そのままの顔を見ると目から涙がこぼれそうだった。
腕の力が抜けたからおれはの腕から抜け出すといったんベッドから降りて、自分の言った事を訂正した。
「ヘンな子・・・って思ってるんじゃなくて、逆にが何も言ってくれないから心配してると思う。」
「え?」
「はもうおれ達の仲間だから・・・仲間のこと心配するのは当たり前だ。」
は自分の手元から目を離そうとはしない。
・・・こっち、見て欲しい。
「あのなっ、おれも昔は一人だったんだ。おれ・・・トナカイのくせに鼻青かったから、トナカイ達はおれの事を仲間と思ってくれなかった。ヒトヒトの実を食べてから人のいる所に行ったんだけど・・・やっぱり中途半端だから石とか投げられて何処にも行けなくなった。おれ・・・寂しかった、仲間が欲しかった。でも色々あったけどそれがあったから今ここに居れるんだと思う。ルフィが仲間だって言ってくれてすごく嬉しかった。だからおれもお前に言ってやる。は仲間だ。」
どーんとおれの体が壁際まで吹っ飛んだ。
「おおっ〜〜〜!!」
「ありがとうチョッパー!」
が体当たりしたらしい。
ちょっとびっくりした。
心臓がどきどきいってる。
「チョッパー大好きv」
「!!」
おれの心臓・・・おかしい・・・いつもよりすっごく早い。
急に熱が上がったみたいに顔が熱い。
おれもの風邪うつったのか?
慌ててから離れると船室の扉へと向かった。
「お・・・大人しくしてないとまた熱上がるぞ。 うわぁ!」
外へ出ようと扉を開けたらルフィを先頭に皆が部屋の中に倒れこんできた。
「うわぁぁぁぁ!」
「!大丈夫か?」
「ちゃんv元気が出るデザート食べるかい?」
「ウソップ!てめぇ足踏んでんじゃねぇぞ!」
「俺じゃねぇって!」
ゴン ゴン ゴン ゴン
「アンタ達一度に喋るんじゃないの!が驚くでしょ!!」
「「「へーい」」」
「あぁっv怒っているナミさんもステキだぁ〜vvv」
「ほらほら、レディの寝室にむやみに入るんじゃないの!とっとと出なさい。」
ナミに追い出されるように皆が扉の外へ押し出された。
扉のわずかな隙間からルフィが首を伸ばしての前に顔を出してきた。
「!元気になったら遊ぼうな!」
ドアの隙間から伸びているルフィの首にが目を白黒させている。
はまだルフィが能力者であることは知らないんだ。
「えっ!?」
「レディを怯えさすんじゃねぇよ!」
サンジ達がルフィの首を引っ張っての前からルフィが消えた。
ナミが扉の前で仁王立ちになって全員を睨み付けた。
「とっとと出てけって言ってんのよ!あ、サンジくんそれ貰ってもいいかしら?」
「モッチロンですともvナミさんの分もお持ちしましょうか?」
サンジの目がハートになってる。
いつ見てもすごいなぁ・・・眼球はどうなってるのか一回調べてみたいって言ったら怒るかなぁ。
「と一緒に食べるからいいわ。」
そう言うとナミは扉の前に居座るクルー達を締め出し勢いよく扉を閉めた。
「おれも出た方がいいか?」
「チョッパーはお医者さんだからいいのよ。さて、・・・具合はどう?」
「だ・・・大丈夫です。」
さっきまで泣いたり笑ったりしていたのに、今目の前にいるは人形のような表情で自分の手をじっと見てる。
ナミが側の椅子を引き寄せて座ってじっとを見つめていると徐々にの体が震え始めた。
それでもナミはから目を離さない。
「ねぇ・・・あたしが怖い?」
「・・・」
何も言わず首を横に振る。
でもまだナミの顔を見ることはできない。
「ねぇ、?・・・言わないとわからない事っていっぱいあるわ。例えば・・・何色が好きか、どんな食べ物が好きか、暗い所は嫌いだとか・・・そぉねぇ・・・あたしはみかんが好き!は何が好き?」
「・・・いちご。」
「いちご?おいしいわよねぇ。そのまま食べるのが好き?それともジャムにしてクレープにかけたりするのが好き?」
「そのまま食べるのが・・・好き。」
「さすがサンジくんね。ここにいちごあるんだけど・・・食べる?」
「・・・うん。食べる。」
戸惑いながらゆっくり顔を上げてが初めてナミを見た。
「ふふっ・・・みたいな可愛い子がこれから一緒で嬉しいわ。あたし以外男ばっかりだから退屈してたのよ。アイツ等に何かされたらすぐに言いなさい!あたしがシメルから♪」
おれは思わず柱の陰に隠れた。
ナミは本当にやる奴なんだ。
びくびく二人の様子を見ているとナミが苦笑しながらおれを指差している。
「?」
「チョッパー・・・逆じゃない?」
「うおっ!」
またやってしまった。
おれはどうしても姿を隠すとき普通とは逆に隠れてしまう。
普通覗く時は片目を物陰から出せばいいのにおれはいつも体を外へ出したまま片目を物陰に隠してしまう。
慌てて体を隠して柱の影から再び二人の様子を見ることにした。
「くすくす・・・」
「が笑った!」
が笑ってる!!
初めて見るの笑顔に無意識におれは驚きの声を上げてしまった。
ナミもびっくりしたようにを見ていた。
「「「「なにぃ!!!!」」」」
おれの声を聞いて再びルフィ達が部屋に流れ込んできた。
「うおぉー!すげーすっげぇー!」
「あぁ〜何てキュートな笑顔なんだvvまるで綿菓子のような笑顔じゃないかぁ〜v」
「・・・笑えるじゃねぇか。」
「よっしゃ!それじゃあ次はキャプテ〜ンウソップ様の話を聞かせてやろう!そうあれはオレがまだ・・・」
「うるさーーーーい!!!」
ナミが部屋から全員追い出そうと追いかけてくるけど、皆の笑顔が嬉しくて少しでもの笑顔が見ていたくって必死でナミから逃げた。
それを見てがまた笑った。
おれ・・・が笑うと嬉しい。すっごく、すっごく嬉しい。
が笑うとおれの心臓、すごく早くなるけど・・・。
早く元気になって・・・もっと、もっと笑って欲しい。
太陽の下で笑うはきっととっても可愛いだろうなぁ・・・。
チョッパー編
チョッパー可愛くてしょうがないですvあのモコモコ抱っこしたいなぁ〜vv
一応傷だらけのヒロインの手当て&面倒をしてくれていたのはチョッパー。船医だから当然と言えば当然(笑)
あ゛っ、ちなみに(前作でも言える事ですが)チョッパーがいるのにビビ&カルーがいない・・・とか、その二人がいないのにロビンがいないとかそういう突っ込みはナシの方向で!!(苦笑)
話の都合上・・・カットさせて頂きました(どーん!)←言いきったよこの人・・・。
チョッパーの心に小さく芽生えた恋の花・・・チョッパーの可愛らしさが伝われば嬉しいなぁ。